DEATH STRANDINGをクリアしたよ

 DEATH STRANDINGをクリアしました。小島秀夫監督作品は初プレイ。

 小島秀夫監督は、任天堂の低迷期に任天堂を否定する為にSONYファンの方々から名前を出されることが多くて*1、ぶっちゃけ印象は最悪だったんですが、作品はおもしろかったです。

 

 膨大な金と人員を割くことが出来る海外のゲーム会社は例外として、現代のゲーム開発の肝は限りあるリソースをどれだけ上手く配分した上でゲームを開発するかだと思う。

 金と人と時間が限られている中で、作成できるものは限られている。敵の数は多い方がいいといっても、レトロなRPGのように100種類も敵を出すことは出来ない。

 必要なのはオープンワールドの広大なマップ。その土台の上で、どうやって必要なものを減らし、コストを減らし、おもしろいゲームとして成り立たせるか。

 

 その意味合いでいえば、ものすごく練り上げられたゲームだと思う。コジマプロダクションは新興のゲーム会社で、いくら小島監督といえど何もかもが足りない。

 オープンワールドのゲームとしてギリギリまで必要なものを切り詰めた上で、それでもおもしろいゲームとして成り立たたせる要素として、配送を選んだ。

 よくゲームの蔑称としてお使いゲーなんていわれるが、この作品はガチのお使いゲー。場所から場所へ物を運んで移動するゲーム。

 よくよく見るとミュールを除いてほとんど人は出てこないし(bridgesの関係者はほぼ全員がホログラム)、建物も大きく分ければ数種類しか出てこない。街を散策とか以ての外。要らないものは切り詰める。

 それでもおもしろい。何故か。ゲームをシンプルにお使いゲーにしたことで、いかに移動をおもしろくするかに注力できたから。

 よくよく考えて欲しい。オープンワールドでいちばん行うことは何か、戦闘?交流?会話? 違う。移動である。移動がいちばん多いんだから、移動が楽しいゲームがおもしろくない訳がない。

 

 その意味では途中でバイクや車を手に入れられたのは残念だった。

 徒歩でいろいろ工夫しながら移動するのが楽しかったのに、バイクや車を手に入れると力押しで進めるようになってしまい、面白さが減ってしまう。配達もミッションではなく、ただの作業になり、楽しみではなく、徒労になる。

 徒歩でしか進めないところもあるのだが、人間はわがままなので車で楽をすることを覚えた途端に、徒歩でしか進めない場所が意地悪な場所に変貌してしまう。

 プレイヤーに楽をする為に車を手に入れさせるゲームは割とあるんだけど、運転が楽になるだけで新たな楽しみを生むわけじゃないから、おもしろさが減ってしまうのがいつも残念*2

 途中から移動が車ではなくジップラインがメインになってきて、そこからは面白さが復活してきた。その直前で道路をつくるコストが爆上がりして、自然とジップラインでの移動に変わるように誘導されてることに気付いて、上手いこと出来てるなぁと感心した。

 

 ネットワークの使い方も洗練されている。移動を重視する中で、他のユーザーとの繋がりを感じられる仕様として、他人が建設した建物が同期される仕様が採用されている。

 この辺は人によってどれくらい他のユーザーの建築物が表示されてたか、どこに表示されてたかが違うので、遊んだ人によって感想が違うと思う。

 欲しいところに橋があったり、ロープが張ってあったりすると思えば、なんでこんなところに邪魔な橋があるんだということもある。そういう橋は、だいたいがいいね‼︎稼ぎの為に不必要だけど絶対に通る場所に置かれてて、異様にいいね‼︎が稼がれていたりする。

 似たような擬似同期のシステムは見たことがあるけど、ゲームの遊びを最大限に増幅させるネットワークの使い方で上手いなぁとこちらも感心した。

 他のユーザーがたくさん建築物を作ってくれているから、道路とジップライン以外は建築物を作成しなかったし、まったく建築物を作成せずにゲームをクリアした人もある程度いるんじゃないだろうか。

 これに関しては発売直後や旬を過ぎてからだと、建築物があんまり無い可能性もあると思うので、遊んだタイミングが比較的よかったのもあると思います。

 

 最後はストーリー。おそらく開発当初は社会情勢も踏まえながらも普遍的なテーマを採用したのだろうが、奇しくもコロナが蔓延する世の中になってしまったことで、妙に的確に社会を捉える作品になってしまった。捉えすぎたからこそ歪さが出てきている気がするのも、それはそれで面白い。

 前述の通り、いろいろリソースが限られている中で、それを上手いことゲームに落とし込み、社会情勢を反映させ唸らせる作品を作り上げたのはさすがとしか言いようがない。

 もう少し時間があってネタバレ可能であれば、もう少し掘り下げて書くことも出来るのかもしれないけど、そうなるといくら時間と労力と分量があっても足りなさそうなので、この辺で終わりにします。基本的には最高評価と思っていただいていいです。

 

 

 巷の評判が高いけど、まったく遊んだことがなくて、いつか遊ばんといかんなぁと思っていたゲーム開発者が2人いて、その内の1人が小島秀夫監督だった*3

 前述の通り、作品も遊んでないのに風評でどんどん小島監督の印象が悪くなっていて、早いところ作品を遊びたいけど、MGSはハードルが高そうだし、どうするかなぁと思っていたところでの独立と新作。

 独立してダメになる開発者も多いけど、何処まで出来るんだろうなぁと思っていたものの、予想以上の完成度でした。感服しました。

 いまは多少状況が変わっている部分はあるにしても、まさしく現在体感しなければならない作品であることは間違いない。遊んでみたいと思ってる方はセールのタイミングならかなりお安くなっていますから、お早めに。

 

 そんで作品がおもしろかったから、小島秀夫監督の印象はよくなるかとも思ったけど、そんなに変わらなかったですね。

 作品も面白かったし、ロジカルな部分も見えたんですが、なんかいろいろ気にくわんなぁと思ったり、印象を悪かったのはこういうのが理由かと納得する部分もあったりとか。

 まぁ、なんか好きになれないってのは今までと変わらず、ただおもしろい作品を作っておられる部分は追加して、小島監督の次回作に期待したいと思います。

 その上でやっぱり好きじゃないです。すいません。

 

 

 

 

 

 最後にネタバレを含む感想(というか、苦情)を書いてみる。書かなくてもいいことではあるんだけど、どこかに書いておきたかった。

 

 物語に関しては大枠では文句は無いのだけど、どうしても文句を言いたいところが1点だけある。これが最後の戦いだ‼︎からエンディングまでが長すぎる。

 物語を上手くまとめる為にあれだけの分量が必要だってのはわかるんだけど、それにしても長い。もうちょっと無駄を削ぎ落として、ゲームとしての面白さを追求して欲しかった。

 俺は配達がしたいんだよ‼︎ なんで銃で倒したり、格闘ゲームみたいなことをせにゃならんのや‼︎ 配達させろ‼︎ と詰みかけながら、何度か叫んだよ。

 難易度を下げればいいってのも、その通りなのだけど、なんかそういうところで下げさせられるのは癪なので、頑張ってクリアしました。

 カットシーンが長いと言われかねないからか読み込みとかの問題なのか、終盤のある場面でカットシーンをやって、特に意味もなく少しだけ動かせて、またカットシーンに戻る意味がわからないシーンもあったしなぁ。カットシーンをやるなら、集中してカットシーンを見せておくれよ。

 あとは、他の全員は東に連れてってもらえたのに、何故か1人だけ西に取り残されて、お前は自力で戻ってこいというのは、なんか一周回って笑ってしまった。功労者だけを置き去りとか、酷すぎませんか⁉︎ 普通はまず功労者を連れてってあげようとか考えませんかね⁉︎

 物語に関しては大枠では文句はないんだけど、最後の締めの部分が冗長で、無駄が多いように感じられたのが残念。もうちょっとコンパクトにまとめて欲しかった。時間が足りなかったのかなぁ。西から東に移動しないといけない理由を含め、割と乱暴な部分も散見された気はする。

 文句は書いたけれど、逆にいえば物語に関する文句はこれくらいで。しかも本質的な部分ではなく、やり方が悪い的なやつです。大枠での評価はすでに書いた通りに高いです。

 それでも書きたかったということは、何かがあったということで察してください*4小島監督の好き嫌いとは別の話です。それが理由だと思っていただいても、別に構いはしないけれども。

*1:曰く、3DSをダメなハードだと小島監督が言ったとかとか。真偽は不明。ただ、小島監督自身は尊敬するゲーム開発者に宮本茂さんをあげたりしていることを考えると、別に任天堂アンチではないっぽい。

*2:そういう意味では批判を受けてはいたが、FFXVの道路の上しか車で走れないというのは割といい落とし所だったのかな。ただ、あのゲームはそれ以前にオープンワールドとして洗練されてなさすぎではあったのだけども。

*3:もう1人は神谷英樹さん。ベヨネッタTHE WONDERFUL 101と挫折し、大神もWii版で1度挫折した上で、PS3版でようやくきちんと遊ぶことが出来た。噂通りに絶品だった。

*4:ある場面でものすごく苦労して、マジで詰まりかけて半泣きになっただけです。