流行りの話題に乗るのって、割とリスク高いよね

 去年のアカデミー賞韓国映画のパラサイトが、米国アカデミー賞の作品賞を受賞しました。米国の賞なので基本的に米国の作品が受賞することが多く、外国の作品は外国語映画賞を受賞する形に落ち着きがち。そんな中で外国の作品が受賞するのは快挙。

 そんな風に韓国映画が受賞したことで、韓国映画はあんなにすごいのに日本映画はどーなのよみたいな話が雨後の筍のように出てくる出てくる。

 

 いろんな話が出てくるのはいいんですが、米国アカデミー賞受賞作品という確固としたほぼ無敵の権威を持った作品を武器に出来るということで、何も考えずに自分が批判したいものを批判できる絶好の機会だ‼︎ とする人が続出。

 一言で日本映画といってもピンキリで、海外の映画祭に出品してガチガチに受賞を狙う作品から、最近人気の若手俳優を主演に大衆が気軽に鑑賞して楽しむエンタメに振り切りまくった作品までいろいろある。

 映画祭で賞を狙う芸術性が高い先進的な作品も、興行性重視で考えきっちり数字を出して興行を成立させる作品も、映画界ではどちらも大事だと思うんですよ。これは国を問わずだろうし、韓国にもきっとあるはず。

 

 そういう意味ではパラサイトはごりごりに映画祭で賞を狙う芸術性重視な作品な訳です。もちろん興行も重視してるだろうけど、どちらかと言えば芸術性重視のはず。

 ならば日本映画で比較対象に置くべきはカンヌ映画祭で受賞した万引き家族であるだろう*1。海外で賞も受賞しているし、目指すべき場所、作品の立ち位置も似通っている。

 そーんな中で自分が嫌いな作品や監督を槍玉に上げて批判する人が出るわ出るわ。アイドルが主演の映画とか、少女マンガ原作の映画とか、某客を呼び込むことに長けた監督の映画、商業性に割り切ってる監督を、パラサイトと比較して批判したりしても明らかに変でしょう。

 100歩譲って、本当に日本でそんな映画ばかりならわかるけど、そんな映画ばかりな訳ではないし、まともに考えれば比較すべき立ち位置の映画は万引き家族以外にもあるはず。

 

 同じ映画だから批判に値するとか言われそうだけど、恣意的すぎるんじゃないの。同じ映画であるものは事実でも、ゴールが違うものを比較したって仕方ないでしょう。

 映画であるならすべて比較に値するというなら、アンパンマンの映画にも海外の映画祭で賞を受賞してないし、こういう作品に客が入る日本映画はダメだ‼︎‼︎‼︎ とか言うんですかね。そこまで言うなら一周回って気持ちいいとすら思うけれど。

 そんでもって、話のオチは自分が好きな作品とか監督とか、アニメとかは希望があるみたいになる訳です。いやパラサイトを使って、自分が嫌いな作品や監督を貶して、自分が好きなものを持ち上げて気持ちよくなりたいだけやんっていう*2

 

 あわせて思い出すのは、アナと雪の女王が流行ったあとの、ベイマックス公開くらいの時期。

 ちょうどそのときはジブリ宮崎駿監督が引退発表をし、ディズニーはアナと雪の女王が超ヒットしたことで復活が取り糺され、再評価を受ける。そんな中で、思い出のマーニーベイマックスが公開されることになった。

 宮崎駿監督が引退し、ジブリは誰が見ても完全に落ち目。思い出のマーニーの評判もよろしくない。アナと雪の女王は超ヒット。ベイマックスもおもしろそうで手堅い。そんな中で出てくる日本アニメは終わった‼︎ これからはディズニーの時代だから製作体制を見習うべき‼︎

 いやこれまで天下をとってたジブリが落ち目になったのをいいことに、ちょうど再び成り上がろうとしてたディズニーで叩いてるだけやん。もうジブリにもディズニーにも敬意も何もないよ。

 当時はこういう記事が割と出ていたんですが、それから5年経った現在で、ディズニー大勝利‼︎ 日本アニメは終わったなんて思ってる人はどれだけいるんだろうか。

 ディズニーがアナと雪の女王以降は安定して作品を出してて評価されてるのは言うまでもないけど、同じ文脈で日本アニメは終わったなんていう人はほとんどいないんじゃないだろうか。

 新海誠監督が興行的な意味で結果を残し、片渕須直監督が芸術的な意味で世間に影響を与えた現在に日本アニメは終わったみたいな話を安易にする人はいないだろう。

 

 似たような話はメアリと魔女の花の感想*3にも書いたんですが、単純に作品の感想を書くときや、何より何かと比較して何かの感想を書くときに、その作品がどういう立ち位置にいるかを認識するのは大事だと思います*4。 

  多くの作品では関係ないんですが、ものすごく話題になった作品の関連作品の場合は、多かれ少なかれ影響してくる。絶対的に客観的な評価なんて出来るはずもない。

 私もブログを3年もやってるんで、似たようなことを書いてる記事はありそうだけどなぁ。好き嫌いは割とある方だし。それでも書きたいときは気にせず書いてしまいますが。

 それでも意識するとしないでは違いが出ると信じたい。何かを書くからには作品や作り手に敬意を持って、無碍に批判することのないよう気をつけて感想を書いていきたいもんです。

 

 

*1:いちおう書いておくけど、ちゃんと万引き家族とか、比較対象として適切な作品をおいて書いた記事もありましたよ。

*2:いちおう言っておくけど、日本映画に何も問題はないなんて話はしてないし、韓国映画より日本映画の方が上なんて話もしてないし(興味がない)、パラサイトの評価がどうだって話もしてないですよ。

*3:http://tekitougame222.hatenablog.com/entry/2017/07/10/180921

*4:この内容とはちょっと違うけれど、自分の身の回りでは誰も評価してないから気楽に批判できる作品を雑に叩いているのを見るのも残念だよなぁ。批判すんなという話ではなく、明らかに読み込みが足りなかったり、視点が変だったりするんだけど、それにまったく気付いていない。批評とか評論が本職の人でもやる人が割といる。細田守監督の作品なんかは一時期からネットでかなりそういう立ち位置になってしまってるけど、そういう作品ほど扱いが難しい。逆にそういう作品を的確に評価してる人を見るとすげぇとなるんだけどね。