犬王を観たよ

 犬王を観たよ。間違いなく年間ベスト級の傑作。だが、不満は多く、表に出ている評価は微妙。

 観客が求めていたのは金メダルだったのだ、だが結果は五輪入賞止まり。日本代表になるだけでもすごい。それでも金メダルを獲ってほしかった、金メダルを観たかったのだ。

 

 犬王の布陣は、監督は湯浅政明‼︎ 原作は古川日出男‼︎ 脚本は野木亜紀子‼︎ キャラクター原案は松本大洋‼︎ 音楽は大友良英 ‼︎ 声優はアブちゃん(女王蜂)と森山未來‼︎

 観る人がみれば最強の布陣。これ以上ない作品が出来上がるはず。

 

 

 鬼才 湯浅政明が作る映像は愉悦に溢れて、松本大洋のキャラクターとの相性も間違いない。

 物語は古川日出男の最高な話を、ドラマ界の稀代のヒットメーカーである野木亜紀子が映画に仕立て上げる。

 音楽は大友良英が作り、そのリズムをアブちゃん(女王蜂)と森山未來が全身で奏でる。

 

 誰か1人が関わるだけで映画を観に行く理由になる、そんな人たちが何人も関わっている。そんな作品が最高じゃないはずがない。

 そして実際に最高だった。最高だったのだが、それでももっと突き抜けられたはずなのだ。最高が、最高の最高になり得なかったのにはいろいろ理由があると思う。

 

 序盤は湯浅政明独特のアニメの愉悦を感じられたのだが、中盤以降は演舞を表現することに集中するあまり、アニメ独特の表現がなくなり、序盤に感じた面白さが抜けてしまったとか。

 演舞をロック調で表現しようとしたが、平安時代の音楽とロックの連続性が感じられず、違和感が大きかったりとか。

 

 少なくとも演舞を現代音楽も入れたロック調ではなく、和楽器も取り入れた連続性があるものにしたり、ラップやタップなど突然変異的に現れてもおかしくない音楽を基本にしていれば評価は変わっただろう。

 中盤以降の演舞もアニメのわかりやすい面白さを封印して、シンプルな演舞をアニメで表現することにより、アニメの面白さを出したかったのだと考えることも出来る。*1

 

 では駄作なのかといえば否‼︎ 傑作、間違いなく傑作。大傑作になり得なかった、超傑作になり得なかっただけで、間違いなく観るべき、アニメを志すものであれば観なければならない映画であることは間違いない。

 惜しい部分が多々あるから微妙な感想が多くなっているのは事実だけど、凡百のアニメと比べれば傑作だろうし*2湯浅政明作品で考えても到達点の一つと考えることも可能だろう。

 これまでの湯浅政明監督作品が好きな人なら観るべき、アートアニメが好きなら観るべき、微妙な評価を見て迷う暇があったら観に行って自分の眼で判断しろ。

*1:関係ないけど犬王の中盤以降を見て、ANIMAを思い出した。 https://youtu.be/q91ceXsdXzM

*2:とはいえ多くのアニメとやりたいことも評価軸も違うので比べられないし、比べられる作品がほとんど無いのだけど