据置機で出た龍が如くシリーズを全作品クリアしたので、レビューしてみる

 龍が如く6で桐生一馬の物語が無事完結したので、シリーズ全作レビューを簡単にやってみる。携帯機出たクロヒョウもあるけど、そちらはプレイしてないので据置機で出た作品のみです。

 基本的にネタバレはしないつもり*1ですが、プレイしたのが5年以上前の作品も多く、いろいろ忘れている部分があります。書く前に再プレイしているわけではないので、間違ってる部分があったら、ごめんなさい。

 

龍が如く

 記念すべきシリーズ第1作目。シリーズのすべての基礎をつくった作品。神室町を舞台にしたオープンワールド作品で、いろんなミニゲームが盛りだくさんという部分は完成している。

 ただ、物語は割と雑。100億の少女を中心とした話はあるのだけど、大部分が中国マフィアやカラーギャングなど、ヤクザの敵になりそうな相手を順番に倒しにいくだけ。リメイク版だと、もうちょっと工夫されているのかもだけど、やってないのでわからない。

 良くも悪くも第1作目っぽいんだけど、続編の方がありとあらゆる意味で向上してるので、わざわざやる必要はないかと思う。

 

龍が如く2

 桐生一馬の最大のライバル 郷田龍司が登場する第2作。神室町に加えて、大阪 蒼天堀も舞台になっている。シリーズの中で唯一、ラスボスが最初から明示されている。郷田龍司はシリーズ中でも最も魅力的な敵キャラクターだと思ってる。

 シリーズの中でも任侠モノの世界観を比較的強く描いている作品で、桐生一馬が属していた東城会と郷田龍司が属している近江連合の抗争が描かれる。その裏に第三勢力が絡んでいてとかあるんだけど、それはネタバレになるので自粛。ヤクザものとして魅力的な作品なので、初期の作品であることを除けばオススメしやすい。

 ちなみにAV女優が作品に参加したのはこの作品が初めてで、夏目ナナさんが声優としても、キャラクターとしても出演されてます。30代以上の人にはかなり懐かしいかも。

 

龍が如く 見参

 宮本武蔵を主人公に据えたシリーズ初のスピンオフ作品。主人公の名前が桐生一馬之介ってところからしてぶっ飛んでる。

 この作品からハードがPS3に移ったこともあり、いろいろ新しいシステムを採用し、ナンバリングで継続しているシステムも多い。出演する俳優さんの声だけじゃなくて、顔も俳優さんを模したものにしたのもこの作品から*2

 宮本武蔵の物語は、昔にバガボンドを読んだ程度なのだけど(うろ覚え)、それでも楽しめた。この時代の遊郭神室町が似ている部分もあって、そういう意味でもいい。戦い方も3種類あって、いろいろ楽しめるのも良かった。

 スピンオフ作品でのすべてに言えることだけど、難ありな部分はあれども安定して楽しめる。好みが分かれると思うけど、龍が如くを1作品だけ楽しみたいのならば、スピンオフがオススメ。

 

龍が如く3

 ナンバリングとしては、初めてPS3にハードが移っての第3作目。桐生一馬が養護施設を始める為に沖縄に移住した為、神室町と沖縄が舞台になっている。

 新しいハードに移り、シームレスバトルやチェイスバトルなど、新しいシステムを導入したのだが、それがことごとく裏目に出た。シームレスバトルは読み込み時間が足りず、無駄な時間を生み、チェイスバトルはかなりの難易度で難儀した。

 物語に関しても、沖縄の明るい雰囲気と龍が如くのヤクザの世界観が合わず、なおかつ政治や米軍など、龍が如くの身の丈に合わないテーマを扱い始めた為、おかしなことになっている印象が強かった。

 個人的には龍が如くシリーズの中で、いちばん評価が低い。システム面は後の作品では改善されてるので、そちらの方がオススメ。

 

龍が如く4

 初心に戻った部分と大胆に改革した部分が混在する第4作目。舞台は地方を設定することなく、初心に戻って神室町のみに*3。但し、操作キャラクターは一気に4人に増えて、群像劇になった。

 操作キャラクターが増えたことで、桐生のシンプルなバトルだけじゃなく、各キャラクターの特徴のあるバトルを楽しめるようになった。桐生一馬が好きな人には物足りない部分はあるかもしれないが、いろんなキャラクターを操作できることで、1作品で4度楽しい感じになっている。

 また、主人公を増やしたことで、桐生一馬で描けなかった部分が描けるようになり、広く深くなっている。ヤクザと警察を巡る設定に関してはいろいろ複雑な部分がありつつも、基本的には1人の女性を巡る話なので、非常に話を追いやすい。

 個人的には龍が如くの中でいちばん好きな作品かもしれない。シンプルに神室町だけで勝負しているところも好みだし、操作キャラクターも全員魅力的だし、話も奇を衒うことなく面白い。群像劇の部分に好みが分かれるとは思うが、そこに抵抗がなければ是非。

 

龍が如く OF THE END

 神室町がゾンビの大群に襲われたという奇想天外な作品。龍が如くスタジオ的には、世界展開を狙って、新作*4を出す為の布石みたいな意味合いもあったのかもしれない。

 自分はこういう射撃系の作品はあまりやらないのだけど、それでも十分楽しめた。こういう作品は難しいイメージがあったのだけど、そこまで難しくもなく。腐っても龍が如くなので、楽しみやすかった。

 いちおうスピンオフということで、これまで人気はあっても主人公にならなかった人物を操作できるのは嬉しい。真島とか、郷田龍司とか。大吾のあの姿はシリーズファンなら必見。あと、個人的にこの作品での遥がシリーズでいちばん可愛いと思ってる。

 洋ゲーどころか、バイオハザードもやらない人間なので、その辺の比較ができなくて申し訳ないのだけど、素人でも十分に楽しめる作品だと思います。龍が如くが持ち得ている、やりごたえを維持した上でのハードルの低さがわかりやすく出ている作品だと思う。

 

龍が如く5

 神室町から一気に全国へと舞台を広げた第5作目。ナンバリングの前作から引き続き群像劇を採用。神室町に加え、博多、札幌、大阪、名古屋の5都市が舞台になっている。

 神室町は前作の使い回しとはいえ、4都市が新規に遊べるようになり、ボリュームは盛りだくさん。各都市に各主人公が割り当てられているので、オムニバス形式で遊べるようになっている。各章ごとにオリジナルのミニゲームなどもあり、単独でも十分に遊べる仕様になっている。

 ただ、いろんな意味でボリュームが増えてしまったことで、最終章に明らかに手が回っていない。特にラスボスに関しては、どう考えても苦し紛れに引っ張り出した感が大きく、そこまでは上手くいっていただけに、どうにかならんかったのかと思う。

 最終章は残念なのだけど、各章はちゃんと作り込まれているので、最終章に目を瞑れば十分に遊べる。特に桐生編のラストバトルは凄く熱いので、是非観て欲しい。今作で初登場した渡瀬勝には是非とも再登場して欲しいんだが、難しいかなぁ。

 

龍が如く 維新!

 龍が如くの登場人物を利用したスターシステムで、幕末を舞台にした作品。坂本龍馬斎藤一が同一人物だったってところからめちゃくちゃなのだけど、そこはまぁ、龍が如くだから。そもそも史実に完全に忠実であることを求める人はプレイしないと思うけれど。

 歴史にはあまり詳しくはないのだけど、史実に基づくところもあり、めちゃくちゃにしている箇所もありといった感じで楽しめた。こういうのはもう楽しんだもん勝ち。ただ、最後のアレはどうしたってやりすぎだとは思うけれど、あそこを許容できるかは好みが分かれるだろうなぁ。

 それまでの龍が如くシリーズをプレイしていると、あのキャラクターがこの役柄にとか、そういう部分でも楽しめる。古い作品のキャラクターも割と出ているので、そういう意味でも嬉しかった。いま考えると、シリーズの区切りが見えていたからこそのお祭り作品の意味合いもあったのかなぁ。

 スピンオフ作品はどれもオススメしやすいのだけど、この作品も御多分に洩れず。龍が如くのキャラクター性が全面に出てるので、そういう意味でも楽しみやすい。幕末の歴史にこだわりがある人にはオススメできないけれど、ある程度のトンデモを許容できる人なら是非。

 

龍が如く0 誓いの場所

 龍が如くの中で、初めて初代よりも過去(1988年)を舞台にした作品。桐生に加えて、若き日の真島が主役に。この作品をナンバリングに含めるかは難しいところなのだけど、他のナンバリングのような設定上の縛りがないので、自由に作られている印象を受ける。

 桐生一馬ががっつり東城会と関係があった時代の話なので、任侠モノの世界観はシリーズの中でも色濃く出ている。特に出演者が豪華で、小沢仁志さん、竹内力さん、中野英雄さんとVシネマで名を馳せている人が相次いで出演。この三名との戦いは必見。特に小沢仁志さん演じる久瀬との戦いはいずれも熱い。

 真島はこれまでのシリーズとキャラクターも、ビジュアルも一変させ、物語も切ない感じに。ヒロイン役を沢城みゆきさんがやってるのだが、こちらも素晴らしいの一言。

 ヤクザをがっつり扱っていたり、他のシリーズとの関連性が薄かったり、マルチとはいえPS4でも出ているなど、現在、龍が如くの中でいちばんオススメしやすい作品かもしれない。

 

龍が如く6

 初のPS4専用ソフトとなった桐生一馬が主人公の最終作。舞台は神室町と広島。

 神室町が舞台となっているのだが、前作まで入れていたのに入れなくなっている箇所が多々。またシステム面も一新されており、シリーズ初期まで戻った箇所もあったりして、いろいろ残念な感じに。

 物語は前半はいいのだけど、後半は賛否両論な感じ。龍が如く3と同じく、後半はヤクザを離れて、政治的な方面に進むたびに違和感が増幅していった。ただ、シリーズをやってる身からすると不満は多いが、そうでなければ気にならないかも。

 桐生一馬が主人公の最終作とみれば残念な部分もあるのだが、単独では遊べなくもない。ただ、わざわざ最終作を遊ぶのであれば、もうすぐ出る新作か、龍が如く0を遊んだ方がいいかもと思ったりする。 

 

思い返して思ったこと

 龍が如くシリーズを初代から順番にレビューした訳ですが、改めて後先を考えずに作ってるなぁと思った。特に龍が如く3までにいろいろ設定をつくっちゃったお陰で、にっちもさっちも行かなくなってるのがよくわかる。

 そもそも桐生一馬は能力がチートすぎるので、作劇上のハードルが高い。戦闘力が個人で段違いなのは当然として、人間関係が広すぎるし、情報も神室町内ならサイの花屋に協力を求めればなんとでもなる*5。この辺を考えると、ある程度の問題であれば、容易に自力で解決できるし、物語になり得ない。神室町以外も舞台にしたり、群像劇にしたのはこの辺りも理由にあったんだろう。

 あと、龍が如く2で狭山薫を恋人役で出しちゃったことで以降のシリーズで恋愛を描くことが出来なくなり*6龍が如く3で桐生を沖縄に移住させたことで以降のシリーズでは桐生をどうやって沖縄から移動させるかが作劇上の最初の課題になっている。

 いろいろ後先を考えずに話をつくってるんだけど、その不器用さもシリーズの魅力と思わないでもない。そうじゃないとこれだけ連続して作品を出せないだろうしなぁ。

 とはいえ、新シリーズか始まるのならば、もう少しあとのことを考えた脚本にして欲しい。さすがに桐生編の序盤で、それまでの暗い雰囲気と真逆の沖縄から始まるのは、もうこりごりです。

 

 

総評

 龍が如くシリーズは初代龍が如くが2005年12月8日に発売されてから、最新作の龍が如く6が発売されるまでの11年で10作品が発売されている。携帯機とリメイクを含めれば13作品、HD版まで含めれば15作品にもなる。

 他に類を見ないほどに多作なシリーズだが、内容は必ずしも他の作品に負けるわけではない。映像にしても、内容にしても、他の作品に十分勝るとも劣らない内容になっている。

 そりゃ、時間もお金も掛けたAAAソフトには太刀打ちできない部分はあるし、龍が如く5みたいに明らかに時間が足りなかったんだろうなぁと思う作品もある。それでも、AAA作品が隙を見せれば喰らいつくくらいのものを出していると思う。

 これだけの作品を毎年出し続けるってのは半端なことじゃないし、もっと評価されていいと思う。

 

 もう一点、評価されて欲しいと思うのが遊びやすさ。ヤクザを扱っている部分でのハードルの高さはあれど、作品自体のハードルはものすごく低い。

 私はゲームがそこまで上手くはないのだが、それでも難なくすべての作品をクリアしているし、だからといって歯応えがないわけではない。相応の歯応えがあった上で十分におもしろい。前に聞いた話だと、龍が如くは作品をクリアする人の割合がかなり高いらしい。

 単なるアクションアドベンチャーとしてだけではなく、どの作品でも数多くのミニゲームを準備して、そういう意味でも遊びつくせるように作られているのは素晴らしい。

 

 世間でゲームを評価する指標はたくさんあれど、龍が如くがここまで支持されているのは、安定した作品を毎年出しているからではないだろうか。かくいう私も、少なくとも龍が如くならそれなりに遊べる作品を間違いなく出してくれるという信頼を持っている。

 龍が如くがそう思わせる理由は作品から伝わってくるおもてなしの心が凄いからだろう。映像が凄ければいい、ゲームシステムが良ければいい、物語がよければいい。龍が如くはそういうことじゃなく、すべてを一定レベルにした上での、隅々までたっぷり遊ばせるというおもてなし精神こそが、龍が如くの素晴らしさなのだと思う。

 

 もうすぐ発表される新作がどうなるかはわからない。龍が如く6ではハードの変更に伴い、後退してしまった部分はあるが、龍が如くチームならそこを取り返した上で新しい作品を出してきてくれるものと期待している。

 

 

*1:ネタバレの定義は難しいところだけど、具体的な事柄は発売前に出ている情報以外は基本的に出さない。ただ、終盤が燃える展開で面白いなどのアバウトな情報は出します。

*2:但し、龍が如く3では何故か採用せず、ナンバリングは龍が如く4から採用

*3:神室町のみとはいっても、地下や屋上に行けるようになったり、マップの中でも地味に行ける場所が増えたりはしている

*4:その後、バイナリードメインという完全新作のソフトが発売。

*5:サイの花屋はあまりにもチートすぎるからか、龍が如く6では完全にいなかったことになってる

*6:龍が如く5でも描いているが、本命がいる都合上、深いところまでは描けない