定額遊び放題はゲームに向いていないんじゃないかと思うので理由を書いてみる

  いまゲーム業界では、サービス提供の新しい形としてクラウドゲームが注目されている。さらにそれと並行して、これまでのコンテンツの単品販売ではなく、サブスクリプションと呼ばれる定額遊び放題の形が出始めている*1

 SONYはPS nowで過去ハードの作品を中心に提供しているし、MicrosoftXbox Game Passで同様のサービスを提供している。

 定額遊び放題と聞くとユーザーにはありがたいようにも聞こえるし、他のコンテンツは実際にそちらに向かっているようにも思えるのだが、果たしてゲームに遊び放題は向いているのか疑問に思ったので、その理由を書いてみる。

 

 音楽、本、映像でサブスクリプションサービスが成功するのはわかる。これらのコンテンツは消費しきるまでの時間が短い。音楽は一曲5分程度、本だと30分から2時間、映像も映画なら2時間で見終わる。

 短い時間で終わるコンテンツだから、サブスクリプションで提供することでたくさんのコンテンツを楽しめるという売りを提供することが出来る。

 

 対してゲームはどうか。ゲームはもちろん作品にもよるが、一作品で楽しみきるまでに10時間以上掛かることがほとんど、100時間掛かる作品も珍しくない。このゲームの特徴を考えると、ゲームに定額遊び放題は向いていないんじゃないか。

 定額遊び放題でお得感を感じるには本数を遊んでもらうことが第一になる。ユーザーは1本を遊ぶのに数十時間以上掛かるゲームを1ヶ月に何本遊ぶのか。もちろん定額に入っていないソフトを遊ぶ時間もある。もちろん他のコンテンツも堪能するだろうし、人が遊びに使う時間は限られている。

 そう考えていくとゲームの定額遊び放題で元をとるのはかなりハードルが高いんじゃないか。自分みたいに新作旧作に限らず、新しいソフトを遊んだとして大体一本、多くて二本の人間だとメリットは少ない。

 もちろん新作ゲームを相当数買うようなコアゲーマーだと違うんでしょうが、そんな人がどれだけいるのか。ゲームを遊ぶ人でも定額遊び放題で元がとれるほどに遊ぶ人は少数派ではないか。

 

 加えて、ゲームのコンテンツとしての特殊性もある。ゲームはコンテンツのリプレイ性が非常に高い。同じ音楽や本、映画を見続ける人は世の中には稀だろうが、同じゲームをひたすらに遊ぶ人は珍しくない。

 スプラトゥーンほどのゲームになれば、1ヶ月、いや1年間ほぼスプラトゥーンだけを遊んでいたなんて人もそれなりにいるのではないだろうか。国内だとスプラトゥーンがわかりやすいが、海外だとFPSのゲームをずっと遊んでいるなんて人は少なくないと思われる。

 こうなってくると定額遊び放題は意味をなさなくなってくる。一つのゲームしか遊ばないのにそんなサービスに加入する意味はないからだ。

 そうでなくても現代のゲームは1本のゲームで遊ぶ時間をどんどん伸ばしていく傾向にある。ネットを介して他のユーザーと延々と遊べたり、DLCでコンテンツを追加する作品も数多い。果たして定額遊び放題にどれだけ需要があるのか。

 

 いやいや定額遊び放題で十分に遊んでいるし、元をとれてるよ〜なんて人も世の中にはいるんだろう。ただ、それってゲーマーの何割なのかなとも思ったりする。

 定額遊び放題に新作が含まれているならまだしも、新作が追加されないのならば、旧作でばかり遊んで元をちゃんととっている人は稀だろう。世の中、そんなに暇な人は多くない。もちろん定額料金次第にはなるんだろうけれども。

 いまどきは数多くのソフトメーカーから多くの作品が発売されるし、インディーズからも多くのソフトが出る。それを定額遊び放題で囲い込みをするのは難しいんじゃないかと思ったりする。

 余程そこのソフトメーカーが大好きでそこのソフトメーカーの作品は全部遊ぶという人や、余程格安に提供されているサービスならともかく、ほとんどの人の場合は普通にソフトを買った方が安上がりになるんじゃないかなぁ。

 ソフトメーカーとしては定額遊び放題が普及すれば、自社のゲームを遊んでもらいやすくなり、他社への牽制になるうえに定期収入が入るから旨いってのはあるんだろう。ただ、大手の囲い込みは弱小メーカーやインディーズを弱らせるだけだから、業界にとってもよくない。

 

 今後ゲーム業界は変化していくんだろうし、クラウドゲームも普及する可能性は高いとはいえ、定額遊び放題はゲームに限っていえば普及する可能性は低いんじゃないかなぁ。やる会社は出てくるだろうし、一定の需要はあるだろうけどねぇ。

 将来のことはどうなるかはわからないとはいえ、自分としてはやっぱり懐疑的なのでしたー。やっぱり作品がブームになるとその作品だけを遊び続ける人が多く出るのは大きいよなぁと思う。モンハンにしろ、スプラトゥーンにしろ、PUBGにしろ。

*1:どうやら正確にはサブスクリプションは正確には定額遊び放題の意味合いではないらしい(6/14追記) https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1906/14/news066.html