未来のミライ
細田守監督の新作。細田守監督作品はネットの反応が全然あてにならないので、新作が出たら出来るだけ初日に観に行くことにしている。
まぁ、周りのスタッフはこれをよく通したなぁ。細田守監督の私的な話をよくぞここまで映画の企画として公開まで通したもんだ。私は昼ドラ*1を昔に見ていた経験があったので前半も割と楽しめたけど、そうでない人は何を見せられてるんだという感覚だっただろう。
もともと細田守監督は私的な出来事を映画にする人ではあるけれど、ここまでエンタメ性を減らして、直球で私的な部分を出してくるとは思わなかった。思えばオマツリ男爵と秘密の島の頃から個人的な出来事を盛り込む人ではあるんだよなぁ。
細田守監督しかつくれない/つくらない作品を観れたという意味ではおもしろかったけど、世間的な意味でおもしろいかといえばダメだろう。
変な方向性は嫌いじゃないので明確には否定しないけど、前作から明らかに脚本がおかしくなってるので専任のスタッフをつけた方がいいと思う。私的な作品をつくるのはいいのだが、それをエンタメに昇華する段階で明らかに失敗している。
宮崎駿監督になりたいのかもしれないけど、細田守監督にあそこまで突出した映像とまとめ上げるセンスはないよ。宮崎駿監督みたいな映像のセンスで物語を吹き飛ばせる人の真似をしちゃダメ。
カメラを止めるな
世間での評判は超高いけど、あんまり楽しめなかった。面白さはわかるけど、ノリきれないし、笑いにくかったなぁ。
なんでかなぁと考えたけど、作中の仕掛けが公式サイトなどの煽りから予想がついていた、長回しの一発撮りは「アイスと雨音」ですでに体験していた、失敗を笑うよりも失敗の恐怖への共感が先に来てしまったあたりが理由かなぁと思った。
情報無しの初見ならもっと楽しめた可能性は高いと思う。他の作品にはない仕掛けで楽しめる作品であることは間違いないし、評価されるのはものすごくわかる。逆にいえば、仕掛けをネタバレされてしまえば半分台無しになる作品で、運悪くそこにはまったのが私なのだとも思うけど。
面白い作品がマイナーからメジャーに引き上げられる実例が出来たのは夢があるよなぁ。ヒット作品をつくった監督すべてにいえることだけど、次が勝負。今作ではインディーズだから見逃されている部分がたくさんあるのも事実だと思うので、監督が次回作でそれを乗り越えてどんな作品を出してくるか期待したい。
ペンギン・ハイウェイ
過去にフミコの告白がネットでバズった監督の新作。原作は未読。
なんか話題になっていたので観に行ったけど、森見節が全開で面白いジュブナイル作品でした。子どもを楽しませるような描写が多様で見事。
子どもたちの描写は類型的ではあるけどいいし、お姉さんの描写も同じくだけど素晴らしい。あふれでるぼくのなつやすみ感がたまらない。
この作品が特別なのは、どこまでも子どもの視点でつくられているからだろうなぁ。
子どもを主人公にしてるけど、大人目線で失敗している作品が多い中で、それでもこの作品が成功してるっぽいのはあくまで子ども向けにつくったことが大きいと思う。
これで石田監督の代表作はフミコの告白からペンギン・ハイウェイになったといっていいのではないだろうか。若い監督か大きく羽ばたいくのをみるのは単純に嬉しい。
次はもっと監督の作家性が見える作品が見たいとは思った。
若おかみは小学生!
アニメオタク界隈で異様に評判が良かったので鑑賞。原作は未読。TVアニメ版も観ていない。
これぞ傑作。職人集団MADHOUSEの底力に唸る作品といっていい。MADHOUSEは今敏監督、細田守監督など個性のある監督の下で作品を発表してきたが、MADHOUSEの自力を限界まで引き出したときにここまで素晴らしい作品が出来るかと唸った。素晴らしすぎる。
もちろんその力を根本から引き出した高坂希太郎監督の手腕が見事なのは言うまでもない。高坂監督の次回作が今から楽しみだし、上手くいけば片渕須直監督のようにブレイクしそう。
ポストジブリと語る人もいるけど、あんまりそうは思わない。そこまでジブリの作風を引き継いでいるとは思えないし、こんな作品をジブリとして出したら、3人の誰かが絶対怒る。ポストジブリはやっぱりスタジオポノックでしょう*2。
物語自体はベタな話ではあるのだが、話の筋をおっこの成長に絞り、序盤に起こることに対してああいうまとめ方をしたのは見事。
ただ、これは90分の作品だからこうまとめた部分が大きいだろうし、120分だと全然違った作品になってたと思うので、120分も観たかったなぁという思いはある。
どちらにしても今年いちばんになり得るくらいに素晴らしい作品だし、映画好きにちゃんと見つかれば、そちらでも間違いなく評価される作品だと思う。観といて絶対に損はない作品だと思います。まだやってるらしいんで、間に合う方は是非に是非に。