任天堂がVRゲーム市場にまだ参入すべきでない理由を書いてみる

 「任天堂もVRゲームの市場に参入すべきか?」*1という記事を読みました。

 以前から似たような記事はいくつか読んでたんですが、任天堂がVRゲームに参入してもいまのところ旨みはないよなぁと思っていたので、そう考える理由を書いてみます。

 

1.VR HMDが機器としてまだ成熟していない

 いくらVR HMDが昔と比べて性能が向上したといっても、まだまだVRにそこまで興味がない人が買うにはいろいろハードルが高いです。

 VRゲームをし続けると酔ってしまうらしいし、値段も据置機よりも高い。多くの人が気軽に使える状況になるにはまだまだ程遠く、現実的に考えてVRゲームが一般家庭に定着するのは数年は先でしょう。ゲーマーとして考えても、限られた時間しか連続してプレイできないのは物足りなさを感じそうな気がする。

 そもそも任天堂の主要な顧客には小学生以下の子どもも含まれており、彼らが遊ぶことが出来ない*2機器に任天堂がゲームを出すのは現実的ではないです。

 

2.新しい市場はリスクが高い 

 まだまだVRゲームは市場が出来たばかりである為、将来的に大成するかもわからず、失敗した場合に大損する可能性がある………という意味でのリスクではないです。

 そういう意味でのリスクは任天堂は常に持ち合わせて商売をしている会社なので、将来性があり、敵がいなければ、積極的に出ていくでしょう。

 では、何がリスクか。何が起こるかわからないのがリスク。まだ市場もハードも固まっていない段階では何かが起これば顧客の信用を失う結果になるかもしれない。予想外の事態は当たり前ですが、予想外なので。

 VRゲームでいえば、幼児が遊んでしまって目に障害が発生してしまい、裁判で訴えられるかもしれない。別の例でいえば、社会的に受け入れられにくいゲームがヒットし、VRゲームが世間的に悪印象を持たれるものになるかもしれない。

 任天堂自身がそういったゲームを発売しなくても、VRゲームを出しているだけで同じに捉えられるリスクもあります。市場が安定すれば、そういうリスクは減ってくでしょうから、任天堂が参入するのはそれからでも遅くはないはず。

  

3.真っ向勝負の性能で勝負してもおそらく勝てない

 任天堂は機器開発やシステム開発を軸とした会社ではなく、あくまで遊びを軸にした会社になります。それ故に様々な電子機器を開発しているSONYや、世界を席巻しているwindowsを擁するMicrosoftとは技術力で差がある。もちろんVR HMDを専業で開発している他の会社とも。

 技術力が必要とされる世界でそれらの会社と真っ向勝負を仕掛けても任天堂に勝てる見込みはないし、リスクが高い。

 他社のHMDを利用する方法もあるが、現在はいずれも高価で現実的ではない。また、スマホを利用するものは安価だが、質が低くなってしまう。そこから考えると、ハード面でわざわざ参入するメリットは低い。

 

4.任天堂は後から参入しても十分に戦える

 普通の会社であれば、これからヒットしそうな市場には早いとこ参入しておかないと、もしブームになったときに乗り遅れる。早いとこ作品を出しておけば珍しいから買ってくれる人が増える上に、認知度がアップし、長い期間で利益を得ることができる。たくさんのソフトが出てからでは埋もれてしまうし、利益も少なくなるから早く参入すべきだと考えるかもしれない、

 ただ、任天堂の場合はそこまで当てはまらないんですよね。豊富なコンテンツとキャラクターを持ってる上に、ソフト開発力を信頼されてるので、後から参入してもソフトは売れるし、デメリットは少ない。もちろん任天堂も早くから参入した方が利益は多くなるのも事実だろうけど、リスクも多い。

 スマホの例をみても、任天堂に関していえば周回遅れで参入しても話題を振りまき、利益を得ることは十分に可能。だから、無理して新しい市場に参入する必要はない。

 

5.Nintendo Switchがまだ船出したばかり

 言うまでもないことですが、任天堂がVRに参入しないいちばんの理由はこれだと思う。Nintendo Switchが軌道に乗り始めて、これから市場を安定させないといけないのに、他の市場に構っている暇なんてない。

 VRゲームを開発する暇があるなら、Nintendo Switchに一本でも多くのソフトを出すべきだし、他のデバイスにソフトを供給する余力はない。Nintendo Switchで新しいソフトを出すことが急務。

 任天堂もソフトの開発のラインを何本も持っているわけではないだろうし、セカンドパーティを含めて考えてもNintendo Switchスマホにソフトを出すので精一杯なのが正直なところでしょう。

 

 長々と書いてきましたが、任天堂がVRゲームにいますぐ参入することはないでしょうし、参入してもそれほどメリットは薄いのは明らかだと思います。

 

 それでも任天堂がVRゲームに参入すべきという記事が出るのは、VR業界にとって旨みが大きいからではないでしょうか。

 任天堂には多くのコンテンツがあり、新しいゲームを生み出す技術力がある。Wii Sportsで一世を風靡するしたことから考えても、新しい技術との相性もいい。もし任天堂がVRゲームでヒットを出せば、市場が盛り上がって、VRに投資をしている人が儲かる。

 ただ、任天堂任天堂でやりたいことがありますし、いろんな企業が参入しているレッドオーシャンにわざわざ踏み込む義理はない。任天堂がVRゲームに参入すべきといっても、VRゲームを推進したい人たちに旨みがあっても任天堂の旨みは薄い。

 もちろん任天堂もVRゲームの研究はしてると思います。バーチャルボーイを大昔に出したくらいですから、技術は間違いなく蓄積しているでしょう。

 

 VRゲームが成功するのか、失敗するのかはわからないけれど、それなりに成功するようならば、任天堂は遅れて参入するくらいのスタンスでいいんじゃないかなーと個人的には思います。

 DS以降は博打みたいな商売を続けてきて、成功したり失敗したりしてきて、褒められたり貶されたりしたわけだけど、業界にも多かれ少なかれ貢献したはずで、たまには任天堂以外が博打みたいなことをするのもいいんじゃないですかね。

 新しい挑戦は博打とニアイコールで、当たるも八卦当たらぬも八卦ですぞ。頑張れ。

*1:https://vrinside.jp/news/does-nintendo-need-enter-vr-game-market/

*2:小学生以下の子どもがVR HMDで遊ぶことは目の成長に悪影響が発生するリスクがあると言われている。その為、PS VRは12歳未満、Oculus riftは13歳未満使用禁止になっている。