日本のアニメは中国に負けるのかをゲーム業界の視点から考えてみる

 海外で製作された日本風のアニメが公開されることが増えてきて、日本のアニメは海外に負けるんじゃないかと語られることが増えてきたので、何の専門家でもない人間がなんとなく考えてみたことを書いてみます。

 ちなみにここで書いている勝ち負けは基本的に興行収入的な意味合いだと思ってください。ぼんやりと日本アニメと書いていますが、日本で多く製作されているセルアニメと捉えていただければ幸いです。

 あと、ざっと身につけた知識で書いてるので間違っているところもあるかもしれません。話半分に読んで頂ければ幸いです。

 

 まず大前提として、日本のアニメはすでに負けています。ディズニー、ドリームワークス、イリュージョンなどの3DCGのアニメに全世界的な興行収入では日本アニメは勝てていない。

 狙っているジャンルややり方がそもそも違うのはありますが、広くアニメジャンルで見ればすでに負けていることは間違いない。

 その中で日本はオタク向けのアニメや、大人向けのアニメが得意であり、別の見方でいえば2Dのセルアニメが得意だったりします。

 そのジャンルに米国や中国が進出してきて、日本のアニメはヤバいんじゃないかと言われているのが現在の話。特に問題になってるのは中国ですかね。

 ここではまず中国に限定して日本のアニメは勝てるのかについて考えてみたいと思います。

 

 基本的な見方は2つあり、将来的に中国に負けるんじゃないかとも、心配要らないんじゃないかとも見ることができます。

 将来的には中国に負けるんじゃないかと思う一番の理由は圧倒的な物量。14億人とも云われる圧倒的な人口、そして世界経済の片翼を担うとも云える経済力。

 人口が多ければ、もちろん若者が多いし、若者が多ければ才能を持った人もそれだけいることでしょう。文化的な環境で日本の方が優れてたとしても、10倍の人数がいれば環境すら凌駕するだけの才能が出てくる可能性は高いともいえる。

 経済力があるから、足りない部分があれば買収するなどして補強することも可能。力のあるアニメ製作会社を買収したりとか、高い機材や理想的な施設、高額な報酬でクリエイターが働きやすい環境を作ることも出来る。

 この辺りは欧米の会社たくさん買収して技術を取り込み、一気に発展していったゲーム業界の例を考えるとわかりやすいと思います。

 

 あと、中国市場だけを考えるなら将来的に日本のアニメは負ける可能性が高い。日本と中国のアニメに圧倒的な差があるなら別ですが、差が少なくなっていく程、自国産の作品が強くなるのは間違いないからです。

 それは国として保護する意味合いでもそうですし、中国人として中国の作品に親しみを持つ意味でもそうですし、中国人の方が中国人好みの作品を作れるという意味でもそうです。

 こればっかりは何らかの力(表現力や技術力)でねじ伏せる以外に他国では太刀打ちできるはずもない。何処の国でも自国の作品に愛着持つのは当たり前だと思います。

 中国が日本風のアニメを力を入れて作らなくなれば別ですが、本気で作り続けるならいつかは中国市場では負けるでしょう。

 

 対して心配要らないんじゃないかと思う理由について。

 これについて、いちばん言われるのはもちろん規制だと思います。現在中国で行われている規制からもわかる通り、いつ何時、どんな規制が掛かるかわからない。自由に作品づくりが出来ないのであれば、発展が阻害されるのは間違いないでしょう。

 ただ、これに関しては一点抜け道があって、中国国内で自由に作品を発表できないなら、そもそも国外向けに作品を作ってしまえばいいだけなんですよね。中国国内にこだわる必要はない。才能と経済力があるならなんとでもなる部分だとも思います*1

 

 中国がダメだからではなく、日本の優位から心配要らないんじゃないかという視点でいくと、豊穣な日本の文化があると思います。特に日本のアニメ漫画文化。

 安価でこれだけたくさんの作品を豊富に読んだり観たりする文化はおそらく他の国には無いものでしょう。小さい頃から多くの人たちがたくさんの作品に影響を受けてきたことは間違いなく他国に対する優位であると思います。

 10年後20年後にはサブスクで同じようにたくさんの作品を観てきた人が世界中から出てくるので優位は少なくなりそうな気もしますが、現状では優位であることは間違いないでしょう。

 

 ざっと大きく中国に負けそうな理由と、心配いらないんじゃないかと思う理由を書いてきましたが、じゃあ結論としてどっちなのよというと、そんなに心配いらないんじゃないかなと思います。

 そう考えるいちばんの理由は、3DCGアニメの方が多くの人に観られるし、儲かるからです。冒頭に書いた通り、日本のアニメはすでに米国のアニメに興行収入で負けています。

 中国の会社が儲けることをまず第一に考えた場合、どうやってここを獲りにいくかを考えるはず。わざわざそんなに市場が大きくない日本アニメの分野を狙う必要はない。

 これから新海誠監督作品が世界的に大きく受け入れられ、ディズニーなどと世界で商業的に戦えるようになれば別だと思いますが、そこの勝算を得られない限りは資金力で日本アニメの市場を獲りにくることは考えづらいのではないでしょうか。

 

 またゲームの分野では中国がどんどんと力をつけてきましたが、これはゲームが情報分野の技術力が鍵になるジャンルであることが大きい。優れたソフトウェア、ミドルウェアを手に入れられるかで、ゲームの出来が大きく変わってくる。

 対して、日本アニメはまだまだ人間の手に積み重なった技術力がものをいうジャンルであるはず。そうなるとゲームのように資金力で一気に下剋上なんてのは難しい。3DCGアニメであれば、その辺なんとかなるかもしれませんが、まだセル画、動画で作っている日本アニメでは難しいのではないでしょうか。

 

 とは言っても、中国は人口が多いのは事実で、それはつまりそれだけオタク人口が多いことを表してもいる。たくさんの中国のオタクが日本風のアニメを作り続ければ、いずれ日本アニメの脅威となり、日本アニメが負けてしまう日が来るかもしれない。

 ここ20年の日本の経済史は、日本が韓国中国に負けると言われる→いやあれこれでそんなことはないと反論→数年後にぐうの音も出ない状態になるってのの連続なので、ぶっちゃけアニメ業界もどうなるかはわかんないと思います。どれだけ負けない理屈を捏ねても数年後には負けている可能性はある。

 ただ、中国がガチで市場をとりにくる程に日本のアニメはでかいのかなぁ。それだったらハリウッドを直でとりにいくんじゃないのってのが個人的な意見だったりもします。

 

 最後に中国のアニメが覇権をとったら、日本のアニメが観られなくなり、自分たちの好きなアニメが見られなくなってしまうぞー思ってらっしゃる方がいるなら、そんなことはないと思います。

 日本は良くも悪くもガラパゴスな国で、自国の文化が好きです。映画も洋画がどれだけすごいと言われても邦画が強いですし、アイドルもK-POPがどれだけすごくても日本のアイドルの方が人気がある*2。ゲームだって洋ゲーが浸透するまでにかなりの時間が掛かりました。

 日本の経済規模が落ちていくに従って製作本数などが少なくなる心配はありますが、どこまでいっても日本のアニメは日本人向けに作られるだろうし、日本のオタクが日本アニメが好きなのも変わらないでしょう。日本のオタクが好きな作品を見られなくなる心配は少ないと思います。

 

 ただ、アニメ業界で考えたときに、縮小する日本市場だけではなく世界市場をとりにいった方がいいのは事実で、そうなったときに中国や米国と戦って勝てるのかといえば微妙です。

 いつまでも日本アニメがマニアックなオタク向け市場のままでいるなら別ですが、市場が大きくなって、このジャンルを攻めると儲かるぞと思われてしまったときに、中国はともかく、米国がガチで獲りにくると敵にならない可能性は高いのではないでしょうか。

 個人的には日本アニメはある程度ガラパゴスで、ハリウッドに目をつけられない程度に粛々と規模を拡大していき、世界中のオタクたちと共にひっそりと楽しむのが日本にとっては幸せな道なんじゃないかと思ったりもします。

 

 ということで、アニメは劇場でしか見ないが、こういう話が好きな人間がなんとなく考えたことを書いてみました。

 自分の中でこうなんじゃないのかと考えて書いていますが、必ずしも根拠がある訳でもないので、考える際の参考程度にでもしていただければ幸い。

 自分としては国に関わらず面白い作品が楽しめれば良いのも事実ですが、日本産の作品の方が楽しめることが多いので、日本企業にはこのまま踏ん張ってほしいなぁと思ってはいます。これからどうなるかはわかりませんが、業界がよき方向に進むことを願って。

 

*1:反面、中国の外交的脅威から他国が規制を掛ける可能性もあり、この辺はまだ未知数で、どの規模でどうなるかがまったくわからないので本文では触れていません。

*2:ただまぁ、いまは和製K-POPが人気なので、その辺どうなのか微妙なところもありますが、女性なら乃木坂46、男性なら広くジャニーズが日本でいちばん人気と言って否定する人はいないのではないでしょうか。